― 手びねりで紡ぐ、やわらかさと凛の調和 ―
栃木県・益子の里山に窯を構える陶芸家、加守田太郎さん。
工房に並ぶ器を手に取ると、まずその形のやわらかさに目を奪われます。
丸みを帯びた“ぼってり”としたフォルムに、
どこか凛とした幾何学模様。
一見、相反するように見える組み合わせを、太郎さんは筆で塗られた釉薬の濃淡によって、見事に調和させます。
同じ形、同じ模様であっても、それぞれが異なる表情を見せるのは、そのにじみや揺らぎが生み出す“個性”ゆえでしょう。
作陶のスタイルは、はじめから一貫して「手びねり」。
父である加守田章二氏――“異才・鬼才”と称され、今なお多くの陶芸家に影響を与え続ける作家――の手法を受け継ぎながら、太郎さんは自然体で、自分の作陶スタイルを築いてきました。
気負うことなく、淡々と、楽しみながら作り続けてきた日々。
その積み重ねが、太郎さんの器にある穏やかな魅力を育てています。
手に持つと、どこか安心する重み。
口にあてると、やわらかく感じる飲み口。
使うたびに「この器でよかった」と思わせてくれる、そんなうつわです。